ここは、私山下浩と、ご縁のある方にご登場いただいて、ご自身のこと、山下ミツ商店のとうふのことを、語っていただこうというコーナーです。
第1回目は、竹本コズエさんです。
竹本 コズエ 氏 商いと人間の根源を描いたと絶賛され、80年代に日本中を感動の渦に巻き込んだ、名作「てんびんの詩」三部作を始め、日韓の壁を超え人が人を愛することの素晴らしさを唱った「ナザレの愛」など、故夫・竹本幸之祐氏とともに、従来の映画の枠を超え、日本のビジネス界などに一石を投じた日本映像企画代表。 |
「卓袱台の味」 |
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「勿体ない。米一粒には八十八人の神さまが・・・」母の小言すら楽しみだった、一家団欒の味。家族揃って小さな丸い卓袱台を囲み、ささやかだがにぎやかな笑い声に包まれていた、あの頃の味。
霊峰白山の麓・白峰村でつくられる堅豆腐「記まじめ!」を食べるたび、そんな遠い日の情景が、なぜか懐かしく甦ります。
「これこそ昔の豆腐」・・・そんな「記まじめ!」を知ったのは十年前。夫の遺作「夫婦だもの」の試写会で、初めて会った山下浩希さんに勧められてのこと。
「堅豆腐を知らないんですか。じゃ私の豆腐を食べてください」笑顔でそう話す彼から、送られてきた堅豆腐「記まじめ!」は、京の絹ごしに慣れていた私にとってまさに驚きの食感。どっしりと大きく、ほのかな大豆の甘味が素材の良さを物語っていました。奇をてらわず、時代に流れに左右されず、心の琴線に語りかけるその素朴な味わいに、どこか「てんびんの詩」に共通しているものを感じました。
それは、私たちが、豊かさのあまり見失ってしまった、卓袱台に象徴される、家族のあたたかな絆なのでしょうか。
後に山下さんが、サラリーマンを辞め、山深い里で、家業の豆腐屋を継ぐ決心をしたのは実は「てんびんの詩」を観たときだった、と話してくれました。私たちの作品が、今では本当に貴重となったこの豆腐「記まじめ!」に一役かっていたことを、きっと夫も喜んでいることでしょう。
vol.10 長由起子様 「情熱を感じる人が集う酒屋でいたい」
vol.08 佐藤俊介様 「目を凝らし、耳を傾けないと聞こえないもの」
vol.07 柴原薫様 「見えないご縁を紡ぐ豆腐」
vol.06 瀧下白峰様 「とうふ『冬 ひと夜』」
vol.05 的崎俊輔様 「あたりまえの豆腐」
vol.04 高橋治様 「"口福"の豆腐」
vol.03 上口昌徳様 「『日本一の朝食』の豆腐」
vol.02 竹本コズエ様 「卓袱台の味」
vol.01 北元喜雄様 「美味より人味」
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