
ここは、私山下浩と、ご縁のある方にご登場いただいて、ご自身のこと、山下ミツ商店のとうふのことを、語っていただこうというコーナーです。
第3回目は、上口昌徳さんです。
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上口昌徳 氏 その洗練されたもてなしと、北陸の豊かな地の食材にこだわった四季折々の美味。「日本一の朝食と出会える宿」として名高い山中温泉「かよう亭」亭主。その他、地元の伝統工芸の伝承にも尽力する石川県観光連盟副会長、山中温泉観光協会会長、山中町商工会会長。 |
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「『日本一の朝食』の豆腐」 |
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「白山の麓に、とてつもなく旨い豆腐がある」
そう教えてくれたのは、白峰村僻村塾の塾頭であり、直木賞作家の高橋治氏だった。いまからもう四半世紀も前のことである。
当時、私は山中の旅館の二代目として、最上の食ともてなしの宿を模索していた。それも、魚介、野菜、山菜と、徹底的に地の食材にこだわりながら。だが、近隣の白山堅豆腐の名は、知っていたものの、いまだ食したことはなかった。さっそく件の白山・白峰村に出向き、まず、川の美しさに驚いた。味の善し悪しは、つまるところ、水の美味しさに他ならない。私の宿がある山中も良水なのだが、その潤沢さと清冽さが桁違いなのだ。これは、ひょっとすると・・・期待に胸を躍らせ、何件かの豆腐屋を巡り、そして「山下ミツ商店」に辿り着いたとき、私の勘は見事に的中した。
「う〜〜む」一口で唸らされた。口の中で大豆の芳ばしさと甘味が広がったのだ。しかもその豆腐には程よい腰があり、ギュッと詰まった渋味にあふれていた。
店主に頼み込んで、その原料と製造法を実際に見せていただいた。特別なことは何ひとつなかった。が、粒の揃った国産の大豆、天然のにがり、そして白山の天然水を用い、その豆腐は昔のまま丁寧にまじめに造られていた。いらい朝は昆布〆の刺身、夜は田楽として堅豆腐は無くてはならない食材となった。
嬉しいことに、私の宿は料理が評判を呼び、特に朝食は日本一だと過分のお褒めをいただくことさえある。だが、特別なことは何ひとつしてはいない。新鮮なこと、栄養があること、そしてなにより安心して食べていただけること。
素材ひとつひとつを吟味し、心を込めて丁寧に造っているだけだ。白山の堅豆腐「記まじめ!」と同じように・・・
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vol.10 長由起子様 「情熱を感じる人が集う酒屋でいたい」
vol.08 佐藤俊介様 「目を凝らし、耳を傾けないと聞こえないもの」
vol.07 柴原薫様 「見えないご縁を紡ぐ豆腐」
vol.06 瀧下白峰様 「とうふ『冬 ひと夜』」
vol.05 的崎俊輔様 「あたりまえの豆腐」
vol.04 高橋治様 「"口福"の豆腐」
vol.03 上口昌徳様 「『日本一の朝食』の豆腐」
vol.02 竹本コズエ様 「卓袱台の味」
vol.01 北元喜雄様 「美味より人味」
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